「スタートアップに参画するために、今の生活を捨ててフルコミットしなければならないというのは違うと考えています」
そう話すのは、株式会社TOMOSHIBIの代表や一般社団法人の理事、フォトグラファーのパラレルワーカーとして活動している田中駆さんです。
2018年の8月に人版のクラウドファンディングサービスである「tomoshibi」をローンチした田中さん。
「全員パラレルワーカー」でスタートアップに挑戦している田中さんにチーム運営のノウハウや、大切にしていることなどを伺いました。
1992年 神奈川県横浜市生まれ。新卒で福利厚生業界最大手である株式会社ベネフィット・ワンに入社。営業、経営企画、DX推進担当を歴任する。入社1年目からフリーのフォトグラファーとしての活動や、学生時代から活動を続けていたカンボジアとの関わりを本格化させる為に一般社団法人を設立するなど、若くしてパラレルワークを実践する。2018年の8月に人版のクラウドファンディングサービス「tomoshibi」をローンチ。
「仲間集めをサポートしたい」想いからサービスを立ち上げる
―田中さん、本日はよろしくお願いいたします。まずは田中さんのパラレルワーカーとしての活動を教えてください。
はい。tomoshibi(トモシビ)という人版のクラウドファンディングサービスの運営をしながら、Sokha Cambodia(ソカカンボジア)というカンボジアに関わる「教育」と「働く」をサポートする一般社団法人の理事をしています。
また、それ以外にも新規事業のパートナーやフォトグラファーとしても活動しています。
―活動内容が多岐に渡っていますが、どのくらいの比率でそれぞれの活動をしているのですか?
現在はtomoshibiの活動が6割くらいで、その他の活動は残りの4割で活動をしています。
―tomoshibiの活動がメインなのですね。tomoshibiはどんなサービスなのですか?
tomoshibiは先ほどお話した通り、人版のクラウドファンディングというのが一番わかりやすいと思います。NPOやスタートアップなどのプロジェクト運営者が、想いやビジョンに共感してくれた仲間を見つけることができるサービスです。
―とても魅力的なサービスですね。サービスを立ち上げた理由を教えてもらえますか?
大学時代からずっとNPO法人や社団法人での活動を続けているのですが、仲間を集めるのって本当に大変なんです。
仲間が集まらないから活動を続けられなくなったという団体もとても多く見てきました。そこでソーシャルな活動に仲間が集まりやすくしたいと思ったのがきっかけです。
また、会社員として働きながら複業・パラレルワークでソーシャルな活動を続けるためには、平日の夜や週末にそういった活動に関わりやすくする仕組みもあると感じました。
そこでオーナーの「想い」に共感したユーザーがプロジェクト単位で働く仕組みを作ろうと思い、tomosnibiを作りました。
全員パラレルワーカーで新しい働き方に挑戦する
―tomoshibiはどんなメンバーで運営をしているのですか?
メンバーは、デザイナー・エンジニア・マーケターなど合わせて12名が在籍しており、僕を含め全員がパラレルワーカーです。
―全員パラレルワーカーとは、スタートアップとしては珍しいですね。メンバーはどのようにして集まったのですか?
一番初期の初期は、学生時代の友人と一緒にスタートしました。その後は知り合いに声をかけたり、イベントやSNSでtomoshibiのことを知ってくれた人が一緒に何かしたいと参加してくれたりして今の形になりました。
―なるほど。ちなみに「全員パラレルワーク」で活動するというのはこだわりがあったのですか?
はい。全員パラレルワークでスタートアップに挑戦することは、メンバーを集める際に意識していました。
個人的にスタートアップに参画するために、今の生活をすべて捨ててフルコミットしなければならないというのは違うと考えています。
労働人口が減っていくことがわかっている中で、フルコミットでないと新しいことに挑戦してはいけないという世の中だと今後、日本では革新的なものは生まれないと思います。
家族など守るべき人がいる状態でもリスクを抑えながら新しいことにチャレンジできるそんな働き方を作りたいんですよね。
なので、tomoshibiを運営する僕ら自身がスタートアップとしての新しい働き方を実践することで、僕たちの働き方を世の中のスタンダードとして広めていきたいと思っています。
できない時はハッキリ伝えてもらうことも大事
―パラレルワークだとリモートでのコミュニケーションが中心になると思いますが、チーム運営はどのようにしているのですか?
おっしゃる通り、それぞれ活動できる時間がバラバラですので、基本的にはリモートワークで案件を進めることが多いですね。
月に1度は顔を合わせて全体ミーティングをしていますが、それ以外は情報共有やコミュニケーションのツールとしてはSlack、タスクの管理はTrelloを活用して各案件を進めています。
―チーム運営で意識している点はありますか?
「自走できるチーム」「できない時はハッキリ伝えてもらう」というのを意識しています。
まず「自走できるチーム」についてですが、運営の大方針としてto be、やりたいことについては僕の方で考えて全体に共有をする形にしています。それ以降のto do、具体的にどう実現するか?という点については、チーム全体で考える形をとっています。
例えばサイトをリニューアルするのであれば、自分ひとりでワイヤーフレームを作る・・・といった方法もあると思います。ただ、それだとチームメンバーそれぞれで割ける時間が異なる、それこそ週によって変動するような状況の中で、僕が全部管理するというのは現実的ではないんですよね。
そのため、開発チームにサイトをリニューアルしたいというto beのみを伝え、後のスケジュールや具体的な実装方法は各メンバーで考えてもらうようにすることで、自走できる状態が作れるようにしています。
―それだとチーム内で意思統一を取るのが大変ではないですか?
そこはあまり大変と思ったことはないですね。tomoshibiのビジョンや想いに共感してくれたメンバーが集まってくれているからだと思いますが、やりたいことの部分で意見が割れることは少ないです。
―なるほど。ビジョンや想いに共感してくれているからこそ、やりたいことの部分で意見が割れることが少ないんですね。であれば自走するチームも作れますし、作業できる時間がバラバラでも案件を進めることができますね。
はい。パラレルワークで活動するからこそ、「想いやビジョンに共感してくれた人を集める」というのはとても大事だと思います。
―ありがとうございます。では次に「できない時はハッキリ伝えてもらう」についても詳しく教えてもらえますか。
はい。「できない時はハッキリ伝えてもらう」についてですが、メンバーによって稼働できるタイミングは本当にバラバラなんです。例えば、勤めている会社によっては月末が忙しくてtomoshibiの作業ができないなど。チームを運営していくには、都度そういった状況に対応していく必要があります。
そこで僕が意識してメンバーに伝えているのは、「できない時はハッキリとできないと伝える」ことなんです。
パラレルワークでスタートアップに挑戦しているからこそ、「やっぱりできませんでした」から発生する時間のロスというのはとても大きいと思っています。
特に基本リモートワークで働いていると個々のメンバーの細かい状況までは把握することはできません。
そのため、少しでも懸案がある場合はそれを発信してもらうことで、何かアクシデントがあって案件の進捗に影響が出そうな場合でもチーム全体でそれをカバーができるような状況を作れるようにしています。
―なるほど。ちなみにメンバーのメンタルやモチベーションを保つために意識していることはありますか?
オンラインの時代に逆行するんですけど、可能な限りオフラインで会える時間を作るようにしています。例えばご飯を食べに行ったり、1時間でいいからミーティングの場を作ってそこで打ち合わせをしつつ、近況などをお互いに共有したりしています。
また、最近はよくイベントで登壇させてもらう機会も増えてきたのですが、その時になるべくメンバーにも参加してもらうようにしています。
tomoshibiを実際に利用しているユーザーと交流してもらうことで、どういう人達のためにサービスを運営しているのかを肌で感じてもらうことで、モチベーションアップにつながればと考えています。
今後は「働き方」と「教育」の分野に進出
―tomoshibiとして、次の展開は何か考えているのですか?
今後は「働き方」と「教育」の分野に大きく展開していこうと考えています。
まず働き方については、「tomoshibi Career(トモシビ キャリア)」というプロジェクトワーク特化型の求人メディアの準備をしています。
今あるプロジェクトワークの求人サービスって、ほとんどがIT系の職種に特化したものなんですよね。案件の内容もエンジニアやデザイナー向けのものでほとんど埋まっています。
そのため、もしITのスキルを持っていない人がプロジェクトワークをしたいと思ってもその働く先が見つからない状態です。
そこでtomoshibiのプラットフォームを活用してIT系以外の求人を見つけることができるインフラを作りたいと考えています。
次に「教育」についてですが、「tomoshibi Academia(トモシビ アカデミア)」というものを準備しています。
―詳しく内容を教えてもらえますか?
はい。今、「課題解決型学習(PBL)」という新しい教育カリキュラムが全国に広まりつつあります。
カリキュラムの内容としては、子ども達自身が課題に思うことをプロジェクトとして取り組むというものです。
取り組みとしては素晴らしいと思うのですが現状だと正直、夏休みの自由研究レベルで止まっていると思っていて、模造紙に活動結果を書いて、廊下に貼って終わり・・・みたいな。そういうのってもったいないと思っています。
現状からさらに昇華させるためにはどうしたら良いのかを考えた時に、実際の経済活動につなげていくのが一番じゃないかって。
経済活動って人を集めるか、お金を集めるかの2つだと思っています。お金を集める手段はクラウドファンディングがあるので、僕たちとしては子ども達が考えたプロジェクトに対して、大人が協力できる形が作りたいと考えています。
具体的にはtomoshibi上で大人の協力者を募ることができる仕組みを課題解決型学習(PBL)の教材として提供できるように準備を進めています。
―tomoshibi以外にも2つも同時並行でサービスを展開しようとしているとはすごいですね。
Web上で新しいサービスを出して、ちょっとバズって使ってもらうということに対して僕はあまり意味がないと思っているんです。
それだとTwitterなどの狭い世界の話になってしまいますし、すでに自分自身の力で課題を解決できる人がちょっと便利になるというだけになってしまいます。
そのため今後はtomoshibiというプラットフォームを活用して、労働市場や教育の領域に対して今はない新しい仕組みを作ることで、本当の意味での課題解決につなげていければと考えています。
そして、僕らとしては一般のスタートアップのようなプロダクト一点突破で行くつもりは全くありません。tomoshibiというプロダクトがありつつも、たくさんのやりたいことが実現できる働き方を今後も実践しつつ、全員パラレルワーカーでスタートアップに挑戦するという新しい働き方が広まっていくように今後も活動を続けていければと思います。
―この度はありがとうございました!
・・・今回、全員パラレルワーカーでスタートアップに挑戦している田中さん、tomoshibiについてご紹介しました。
全員がパラレルワークとしてスタートアップに挑戦するのは、これまではあまりに見られなかった働き方だと思います。田中さんがおっしゃる通り、今後も日本が新しいサービスを作り続けていくにはなくてはならない働き方になるのではと感じました。
また、今の生活を守りながら新しいことにも挑戦ができるというのもパラレルワークのメリットだと思います。少しでもたくさんの人がパラレルワークで新しいことに挑戦がしやすい世の中になれば良いと個人的にも思います。
もし、新しいサービスや仕組みを作ってみたい!という方がいたら田中さんの働き方やチーム運営のノウハウなどをヒントにしてもらえると嬉しいです。
tomoshibi(トモシビ)|仲間を集めるプラットフォーム
また、以下のイベントが開催予定とのことです。ぜひチェックしてみてください!